キンモクセイとインターネット 180927 [safpoc]
キンモクセイの花の盛りが来た。
大学の近くには結構な距離、キンモクセイが咲き乱れる桜並木ならぬキンモクセイ並木がある。
東京にいたときは町のスケールに合わせられた植物ばかりだったので考えたことも無かったが、その並木を通ると、キンモクセイは存外背が高く、大きく育つこと、地面を埋め尽くすうつくしい香りの花は金というより、記憶よりもずっと鮮やかなオレンジであることを知ったりする。
もちろんこの道を通るのは四年目で、秋雨で濡れたキンモクセイの芳香が辺り一面にたちこめるのも四回目なんだけど、都度新鮮に嬉しくなるので毎朝毎晩深呼吸して通っている。
そしてわたしはまた、毎年この季節が来る度、まだ見ぬ「モクセイ」の花について思いを馳せていた。
つまり、キンモクセイというのは「モクセイ」というプレーンな、"素体"があり、そして赤モクセイやら青モクセイやら何らかのフレーバーがあり、そのうちの"金モクセイ"なんだろうと、深く考えずに、特に調べずにそう思っていた。
ところが今朝思ったのだ。
こんなに全国的に有名で、また並木を作るほど広く愛される花の素体であろう"モクセイ"をなぜ見たことも聞いたこともないのだろう?と。
エウレカ!
ひょっとしてそもそも「モクセイ」なんて花はないんじゃないのか?
キンモクセイは亜種や本流などなく、そのまま単一品種で、名前は様子をそのまま表しているだけなのでは?うまく言えないなぁ
(そして例も思い付かない!思い出したら追記しようとおもう。)
いやでもだってだってそもそもキンモクセイは漢字で書くと金木犀、それを読み下すときっと意味になっていて、たぶんこんなふうに…「木に金のような色の花が犀のようにたくさん……(サイ……?)たくさん……ついてる様子を……(今サイって言った?)」
え、なんでサイ?哺乳類の?ツノがある?
犀の部分には幾星霜的な意味の言葉がついていると思ったのに……
完全に天才的な思いつきだとおもった仮説は突如現れた哺乳動物によってめちゃくちゃにされてしまった。
辞書を引いて犀にほかの意味を見出だそうとしたがするどい、ぐらいの意味しかなく(ツノからか?)大人しくGoogle検索をかけたほうが良いことがわかった。
そう、わたしはインターネットネイティブ世代。箸の持ち方から恋人の家までだいたい検索して知識を得てきた人間。
早速「金木犀 サイ なぜ」で検索した。
余談だが思考とインターネット検索が完全に結び付いているせいで最近先輩に実験手法を「○○(単語) なぜ…」と検索窓方式で聞いてしまい「ちゃんと喋ろうね」と返された。
話を戻そう。上記のように検索したところでどうせ知恵袋の適当な知識が返ってくるだろうと思っていたが、思いの外詳細に解答してくれているブログが見つかった。
やはりみんなキンモクセイがサイの字を冠している理由が気になって仕方ないのだろう。
気持ちわかるよ。
そして検索したところ、「げたにれの “日日是言語学”」さんというブログの「「金木犀」 には、なぜ “サイ” が入っているのか?」というエントリに辿り着いた。正に知りたかったことがドンピシャである。神じゃん。記事は下記URL。
〈https://gamp.ameblo.jp/nirenoya/entry-10147914673.html〉
ところで記事は2008年のこの時期に書かれたものである。10年も前の記事を一瞬で引き出せるのはすごく便利なことだと実感する。10年前、わたしはだいたい小学校高学年だったのでもう数ヵ月するとアメーバブログでブログを書き始める。PVも読者数も今となっては覚えていないが自分の書いた日記もあっさり引っ張れることを思うとすごく辛い気持ちになる。早くからインターネットに触れたオタクは思い出したくないことが大量にインターネットに残ることになる。
話が完全に逸れたが、記事によると
・モクセイという属がある
・ギンモクセイもウスギモクセイもある
・漢字や言葉自体は中国から入ってきた言葉
……いやあってるんかい
ともあれこの記事からわたしの仮説は昨晩以前のものが正しいようだった。
その後調べるとモクセイというと通常ギンモクセイを指すこと、モクセイという総称があり、キンモクセイはそのなかの一種であることがわかった。
また記事にはこれらのバリエーションを中国語でなんというかも書いてあった。以下引用。
"
中国語ではどう言うのかというと、
【 金木犀 キンモクセイ 】→ 丹桂 dānguì [ タンクイ ]
【 銀木犀 ギンモクセイ 】→ 銀桂 yínguì [ インクイ ]
【 薄黄木犀 ウスギモクセイ 】→ 金桂 jīnguì [ チンクイ ]
"
なるほど、日本語では馴染みがなかった他のバリエーションも中国語で書かれると聞いたことあるものばかりだ。お茶に含まれるものだとわかる。
しかし桂、と書かれるとニッキ、シナモン、を想像してしまう。ざっくりいうと昔は同音異義語だったらしい。
肝心のサイについてだが、記事の最後に
「どうやら樹表がサイの肌に似ているためこの名前がついたようです。近所のキンモクセイの肌に触れて納得してみてください」
と締めくくられていた。理由を知るために中国や台湾の文献を当たっていたりすごく良い記事だった。あとはとても手の込んだ嘘記事でないことを祈るだけだ。
こうしてインターネットによって世界の見方がまたひとつ増えた。明日の朝は深呼吸のついでにキンモクセイの樹表に触れてみて、金木犀の"犀"を感じてみようとおもう。
未だサイに触れたことは無いのだが。